「太陽は何色?が教えてくれたこと」
父の仕事の関係で、幼少期をスペイン・マドリードで過ごしました。今から約50年前のことです。当時の日本にはまだ成田空港もなく、スペインという国を知る日本人もほとんどいませんでした。現地では中国人と間違われるたびに、「私は日本人です!」と自己紹介する日々。
帰国後、小学校のお絵かきの時間。クラス全員が赤で太陽を描く中、私だけ黄色で描きました。先生に「太陽は赤ですよ」と言われたことは、今も忘れられないショックでした。スペインでは、太陽はオレンジでも赤でも黄色でも、時にはピンクでもよかったから。
「窮屈だった日本の学校、そして見つけた自由」
絵は一例にすぎませんが、日本では「みんなと違う子」になっていた気がします。堅苦しく感じた学校生活の中で、高校生の時に米軍基地内のマクドナルドでアルバイトをする機会を得ました。校則の厳しい学校でアルバイトは禁止、見つかれば退学というリスクを冒してでも、「1日も早く海外で生活したい」という思いから語学力を身につけることを選びました。
基地内は公用語が英語、通貨はドル、メニューもサイズもアメリカ仕様。時々日本人のお客様が来て日本円で対応することもある、まさに「多言語・多文化」が当たり前の空間でした。
そして印象的だったのは、メニュー通りに注文する人がほとんどいなかったこと。「玉ねぎ抜いて」「ピクルス多め」「MサイズのコーラをLカップで氷多めに」——一人ひとりが自分仕様にカスタムするのが普通でした。
「香港・イギリス・ベルギーで気づいた、"みんな違う"という当たり前」
大人になり、念願だった香港での就職が実現しました。同僚は様々な国籍の人たち。「みんな同じ」という前提がそもそもない環境が、とても居心地よく感じられました。その後、イギリス、ベルギーでも暮らしましたが、どこでも必ず聞かれるのは日本の文化や風習についてでした。
そこで気づいたのです。自分は日本のことを何も知らなかった、と。この気づきが、日本のことをきちんと伝えたいという思いにつながりました。
「茶道が教えてくれた、"型"の奥にある自由」
日本文化を学び直したいと思い、帰国後に茶道を習い始めました。師匠や社中の皆さんとの交流を通じて気づいたのは、伝統やしきたりという"型"の奥に、とても自由な精神が息づいているということでした。
「ふろしきは、いつも暮らしの中にあった」
振り返れば、ふろしきは常に生活の中にありました。押し入れのお布団を包んでいた唐草模様のふろしき。祖母や母が使っていたシルクのふろしき。茶道のお茶会で荷物をまとめるために使ったふろしき。
そして、海外の友人たちと京都を旅行した時のこと。友人が「ふろしきをお土産に買おう」と言うのを聞いて、ハッとしました。一枚の布が、使う人によって自由に姿を変える。正解はない。少し遠回りをしましたが、「自分で決める楽しさ」——それこそが、自分がずっと感じてきたことそのものだったのです。
横浜捺染に見つけた、自分のルーツ
ふろしき沼を深く掘り下げていくうちに、思いもよらないことに気づきました。自分の故郷にも、豊かな染色の歴史があったのです。約120年前、横浜捺染は日本を代表する繊維産業のひとつとして生まれ、伝統的な技術を新しい方向へと押し広げていきました。職人技と革新が、並んで育っていった場所——それが横浜でした。
その瞬間、すべてがつながりました。ここが自分の原点であり、拠り所であり、故郷だったのだと。ただ夢中になっていただけではなく、気づかないうちに、先人たちが切り拓いていた同じ道を歩いていたのです。
ここまでの遠回りの道のりを振り返って、ようやく自分自身について気づいたことがあります。私はふろしきの中に、自分らしさを見出していたのだと。そして、自分が本当に好きなことは、異なる文化と触れ合うことなのだと。ふろしきは伝統を守るだけのものではありません。それを進化させ、今の時代に合ったものにし、次の世代へと手渡していくものです。今、私が作っているふろしきが、過去と未来をつなぐ架け橋になれたらいいなと思います。
「MUSUBISMのはじまり」
こんな自由なふろしきの魅力を、世界の人にも、そして日本の人にももっと知ってほしい、そう思いたって脱サラし、MUSUBISMを立ち上げました。
普段、着物を着るのはお茶のことや、着物関係のことがあるときくらいです。着物が好きなので、着こなしを勉強していますが、私の家には和室はありません。デニムを履いて、アメカジっぽいカジュアルな格好が好きなんです。それが自分らしいスタイルだから。でも、ふろしきのデザインは、どこか「和風」に寄っているものがほとんどです。だから、カジュアルな普段着にも自然に馴染むデザインで、自分がずっと感じてきたのと同じ自由さを持ったふろしきを作りたいと思いました。実は、私は両方好きなんです。和風も、洋風も。伝統も、カジュアルも。そんな自由さもまた、ふろしきそのものだと思うから。最後は、自分で使い方を決めればいい。
一枚の布に正解はありません。使い方、結び方はあなた次第で、自由な形に変化するのです。
ぜひMUSUBISMのふろしきをお手に取ってみてください。