The Value of Using Our Hands

手を動かす時間の価値とふろしき

今は、考えたことの多くがAIで形になる時代になりました。
便利で、速くて、生活を支えてくれます。
その一方で、自分の手を動かす時間の価値が益々高まっていると感じます。

ふろしきの基本は、包むことと結ぶことです。
どれも機械には置き換えにくい、人の動き。
そのちょっとした所作に、気持ちが宿ります。
日本では、こうした一手間に心遣いを感じます。
相手のことを思う気持ちが、動きの中に表れるのです。
形ではなく、行為そのものが思いやりなのです。

手作りのお菓子や作りすぎたおかずをお裾分けする時に、ものによってはジップロックが便利な時もあります。けれど、本や小さなプレゼントを渡す時にふろしきで包むと印象が変わります。
包む前に相手を思う時間が生まれます。
その時間が、贈り物を特別にします。

手を動かす時に大切なのは、余計な気持ちを入れないことです。
包む時間には、相手に喜んでほしいという素直な気持ちだけがあります。その気持ちが、布を広げ、形を整え、結ぶ動きにつながります。邪念のない動きは、相手に伝わります。
同じ物を贈る場合でも、包む時間が生む思いが印象を変えてくれるのです。ふろしきは、その気持ちを形にする良い道具です。

手を使う行為には、記憶が残ります。
どの布を選んだか、どこで結び直したか、どの瞬間に整えたか。
小さな動きが、贈る側にも贈られる側にも静かに残ります。AIが多くのことを代わりにこなしてくれる今だからこそ、
「自分の手を動かす時間」の価値を見直すいい機会だと思います。
手の動きの中に文化があり、考え方があり、人の姿勢があるからです。

次に誰かにプレゼントをする時は、ぜひふろしきで包んでみてください。その一手間が、相手の記憶に残る贈りものになります。

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