
感謝を包む日
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5月。風がやわらかくなり、陽射しが心地よいこの季節に、
私たちは母の日を迎えます。
母の日は、アメリカで生まれた習慣です。
亡き母を偲ぶ一人の女性の想いがきっかけとなり、
いまでは世界中で大切な人へ感謝を伝える日として広まりました。
けれど、本当は特別な日だけではなく、
日々の中にも、伝えたい「ありがとう」はたくさん隠れています。
日常の中で用意される食事。
整えられた空間。
見守るようにかけられる言葉。
誰かがそっと手間ひまをかけ、そっと差し出してくれているもの。
私自身、幼い頃スペインで育ったため、
和食にはなかなか馴染めず、
みんなが遠足に持ってくるおにぎりや焼き鮭のお弁当が少し苦手でした。
そんな私のために、母は、
「ボカディージョ」という、スペイン風のサンドイッチ――
生ハムやチョリソー、スペイン風オムレツをバゲットに挟んだもの――を、心を込めて作ってくれました。
40年前。
クラスメートたちに不思議そうに見つめられながら食べたあのお弁当には、
母の「あなたの好きなものを」という想いが、ぎゅっと詰まっていました。
あたりまえのように与えられるものの裏には、
見えない優しさがたくさん重なっている。
それを思い出させてくれるのが、
今日のような「感謝を包む日」なのかもしれません。
花束やプレゼントがなくてもいい。
一言の「ありがとう」、
心を寄せる時間、
そっと手渡す気持ち――
それだけで、十分に心はあたたまるのだと思います。
そして、もし感謝の気持ちを何か形にしたいときは、
贈りものを「風呂敷」で包んでみるのも素敵です。
一枚の布に、気持ちをそっと重ねて。
開くときも、包みを解くときも、
そのやさしさが手から手へと伝わります。
感謝を包んで、そっと手渡す。
今日は、そんな一日になりますように。