
包むこと、結ぶこと。映画『おばあちゃんの家』が教えてくれた優しさ
韓国映画『おばあちゃんの家』(2002年公開)は、田舎で暮らすおばあちゃんと、都会から預けられた孫とのひと夏を描いた作品です。最初は不満ばかり口にしていた少年が、やがておばあちゃんの優しさに気づき、少しずつ変わっていく姿が心に残ります。
この映画には、ポジャギという韓国の伝統的な風呂敷が登場します。おばあちゃんが野菜を包んで街に売りに行く場面、孫が気に入らない髪型を隠すために頭に巻く場面など、日常の中に自然に使われています。
特に印象的なのは、孫が好きな女の子に会いに行く場面です。おばあちゃんは古びたゲーム機を使い古しの包装紙に包み、「持っていきなさい」と渡します。孫は「こんなの使えない」と突き返しますが、その包みには実はお金が忍ばされていました。帰り道、怪我をしてボロボロになった少年は、ポケットに残っていたその包みを開け、はじめておばあちゃんの深い思いやりに気づき涙を流します。
この場面は、包むという行為が単なる物の受け渡しではなく、心を包む行為であることを教えてくれます。見えない思いを布に込め、そっと渡す。その優しさが相手の心に届いた瞬間、布は日用品以上の意味を持ちます。
ポジャギは韓国の伝統的な風呂敷で、贈り物を包む、荷物を運ぶ、生活の中のあらゆる場面で役立ってきました。日本の風呂敷とよく似ていますが、布をつなぎ合わせて作る特徴や鮮やかな色合いに独自の美しさがあります。
私は風呂敷を作っていますが、一枚の布は掛けるだけでも役立ちます。けれど、包み、結ぶことで命が宿り、人の役に立つものになります。包むことは心を包むこと。結ぶことは心と心を結ぶこと。その象徴を、この映画の中に見ることができました。
国は違っても、人が人を思いやる気持ちに変わりはありません。ポジャギも風呂敷も、暮らしを支え、人の心を結ぶ大切な布です。『おばあちゃんの家』は、その普遍的なつながりを静かに映し出す映画でした。
風呂敷を見たり、手に取ったりする時、そこに込められた思いを想像すると、自分の暮らしの中にも小さな優しさを加えられるのではないでしょうか。
最後に、映画の雰囲気を味わえる予告編を紹介します。本文を読んだ後に見ると、より一層心に残ると思います。
出典:YouTube「The Way Home (2002) Official Trailer」